絶対に失敗は許されないフィットや、ブランドイメージを背負ってコンサバにならざるを得ないアコードの新型が2013年に相次いで発売されたが、そこには人々がホンダに期待するものは多くは見られませんでした。その一方で東京MSで大盛況だったS660は最高にとんがったクルマなのに程よく力が抜けた絶妙なバランス感が印象的でした。おそらく市販モデルも十分に期待できるでしょう。
かつては5ナンバー時代のアコードを始め、最終型のレジェンドやインスパイアも一見地味な存在ながらもよく見れば素晴らしい造形に包まれた抜群のデザインをしています。発売から10年経過してもまったく魅力が薄れない名車と言っていいと思います。いずれも力が抜けて遊び心が良い方向へ転がっています。一方で先代と先々代のアコードは、明らかに力み過ぎで余裕の無いデザインが酷いですが・・・。
待っていればホンダがまた気の利いたデザインのクルマを作ってくれるでしょうが、Noneのような軽ならまだしも、ここ近作の普通車はどうもカチカチでなかなか期待できる気配がありませんでした。そんな折に出て来たのがホンダ・ヴェゼルで、ホンダ唯一のSUVであるCR-Vからは想像が出来ないほどにポップに仕上がっていて、いよいよホンダらしい「力のぬけた」良いデザインが登場してきました。
簡単にいうと、スバルの好調なXVのコンセプトをそのまま踏襲したようなクルマです。ホンダにしては恐ろしく素早いタイミングで繰り出してきたコピーモデルという形になっています。スバルXVはもはやSUV(フォレスターの仲間)と呼ぶには違和感があるほど、独自の世界観を築きつつあるクルマで、「XV-スタイル」という新しいジャンルを切り開きつつあります。XV以前にもVWクロスポロやBMW X1といった先駆的モデルはあったのですが、「なんちゃってSUV」という入門モデルと見做されている雰囲気が確実にありました。イタリア車としてフィアットからも発売されているスズキSX4も、かなり早い段階で登場しましたが、日本では地味な存在に留まっています。このクルマのデザインはジウジアーロ率いるイタルデザインが取り組んだものです。
しかしスバルXVは、それら廉価版モデルと見做されてしまう情けないクルマ達とは一線を画した洗練されたクルマとして登場し、このクラスのテーマカラーである「オレンジ」を流行色へと変えていきました。XVが素晴らしいのはデザインやカラーリングだけでなく、衝突安全性の面でも強敵のVWゴルフを超える脅威の数値を叩きだし、ユーロNCAPの単純なスコアだけなら、世界の頂点に立った受動安全性を誇っています。
ホンダもこのスバルの謙虚な姿勢には敬服しているようで、HVのアーバンSUVコンセプトから市販モデルに落とし込んで、ヴィゼルとして市場に投入するに当たり、このクルマへのユーザーの期待に最大限に応えるための努力の痕が内外装の意匠に強く見られます。XVは今や本家のインプレッサのイメージを完全にジャックしていて、G4やスポーツHBの古くさいイメージは次のモデルでは淘汰されているかもしれません。
輸入車のスポーツHBが話題の2013年でしたが、その裏で日本車のトレンドは着実に変化しています。もはやスポーツHBは古くさいスタイルで、これからは「XV-スタイル」なんだという勢いを感じます。アクセラを先代と同じラインナップで自信満々に出したマツダとシビックを復活させずにヴェゼルを作ってきたホンダはどちらが戦略的に正しかったのか? 2014年が終わる頃にはまた違う結論が出ているのではないかという気がします。
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