2013年8月13日火曜日

次期NSXはアメ車全開のようだ・・・

  日本人は欧州車が好きなように、アメリカ人は日本車が大好きだ。その結果というべきか、アメリカメーカーは日本車を熱心に研究している。TPPとともにアメリカからエコでコンパクトなクルマが大量に輸入される日も近いだろう。TPP交渉で日本の軽自動車規格に再三に渡って言及する理由は、彼らの分析ではすでにEVやハイブリッドカーにおいてGMやフォードが日本メーカーに決して劣っていないという自負があるようだ(EV専門メーカーのテスラの低調はやや誤算だったかもしれないが・・・)。

  そんなアメリカの首脳部の思惑をよそに、日本メーカーとアメリカ人ユーザーの蜜月は続いている。その先頭を走っている日本メーカーはホンダだ。主にアメリカ市場で日本車が受け持つミドルクラスでは、トヨタよりも商品力は完全に上回っている。主力車種のアコードはエンジンの性能から車体剛性に至るまで、北米市場で展開されるDセグセダンの中で最高の評価を得ている。受動安全性に関してもボルボやスズキと並んで最高レベルだ。

  そんなホンダも独自の高回転型パワーユニット(いわゆるV-tec)が時代に合っていないという指摘もあり、高性能車としてのホンダのポジションはやや危ういものになっている。もちろんクルマの基本性能は高く看板車種のアコード・シビック・CR-Vはいずれも出せばそれなりに売れる。しかし専門誌のレビューでは先代モデルと比べて不満が残るなど2000年代後半からのホンダの評判は良くない。もちろんこれには事情があり、ハイブリッドやミニバンの開発合戦をトヨタと繰り広げた結果、高性能車への開発に十分手が回らなかったからだ。

  しかし思わぬ形でホンダにも転機が訪れたようだ。ライバルの日産とトヨタが相次いでスーパースポーツを開発し、北米シェア拡大を目指すVWもポルシェ・ランボルギーニ・ブガティを傘下に収めて攻勢を強めてきた。経営危機を脱した米国ビッグ3もそれぞれに500psクラスのクルマのラインナップを強化して、俄然スーパースポーツが盛り上がってきた。北米が主戦場のホンダも当然ながらこの競争に参入すべく、スーパースポーツの新型NSXとマッスル=セダンになる新型レジェンドの開発に着手している。

  初代NSXはV6の280psという日本基準のスペックでデザインも日本のスポーツカーを代表する美しさを誇っていたが、新型(2代目)NSXはその風貌(デザイン)からサイズ、出力に至るまで完全に北米仕様になっている。初代をこよなく愛する日本のファンにとっては、期待と不安が入り交じった複雑な気分ではないかと思う。バブル期の日本で人気絶頂だったフェラーリやポルシェを狙って作られた初代と違って、新型がターゲットにしているのはシボレーコルベットとSRTヴァイパーのようだ。米国ホンダが設計から製造までを全行程アメリカで行うということもあって、ライバル車以上にアメリカンなデザインになっていて、日本人の感覚からいくとコルベット>ヴァイパー>NSXの順に親和性を感じるほどだ。

  日産GT-Rが日本車としてのデザインに拘った結果、アメリカでの販売が思うように伸びなかったことなども、新型NSXのデザインに大きく影響しているような気がしてならない。ライバルのコルベットは5代目でマツダのRX-7FD3Sのデザインをパクったことで有名だ。もう1台のSRTヴァイパーも同じフィアット傘下のフェラーリの影響を強く感じるデザインで、アメリカ車というより欧州車に近いデザインをしている。スーパースポーツのデザインは様々なメーカーがいろいろと影響し合って形成されつつあるが、新型NSXのデザインはそんな価値観を真っ向から否定するかのようで挑戦的ですらあるように思える。ライバルの日産GT-RやマツダRX-7の影響を、全く受けないように作り上げたデザインというならそれもホンダらしいのかもしれない。