2013年7月21日日曜日

新型フィットHVの勝算は?


   ホンダがフィットのFMCを公表していて、ハイブリッドのカタログ燃費が36.4km/Lになるようだ。トヨタのアクアを超えるカタログ燃費を当初から掲げて開発していたようで、かなり前からハイブリッドの最高燃費を叩き出すことを宣言していた。トヨタもこれに合わせてアクアのMCを敢行してさらに燃費を伸ばすと幹部が明言している。

  ホンダとトヨタの燃費競争にどれだけの意味があるのか正直言って疑問だ。ある国内メーカーの関係者が言っていたが、ハイブリッドだろうとガソリンエンジンだろうと国内メーカーはその気になれば40km/Lは軽く出せるそうだ。なんでそうしないかというと、燃費を伸ばそうとすればそれだけエンジンのレスポンスは穏やかなものになり、乗り心地や運転フィールに加えて、安全性までが全面的にスポイルされるらしい。
 
  そもそもカタログ燃費自体もかなり曖昧なものでしかない。まったく意味がないとは言わないが30km/L31km/Lになったことに大きな意義は見出しにくいのも事実だ。トヨタとホンダはどうやらクルマの性能そのものをこの曖昧な「燃費」に転嫁して、あたかも激しく技術を争っているかのように演じている。どちらの開発者も燃費なんてクルマの良し悪しにはそれほど重要でないことは分かっているはずだ。それでもナンバー1の燃費と宣伝することで、簡単に消費者は集まってくると考えているようだ。ちょっと言葉が悪いかもしれないが、ユーザーを馬鹿にしたような競争に何の意味があるのだろうか?

  ホンダは今回のFMCでフィットに2ペダルMT (DCT)を導入するようだ。あくまで憶測に過ぎないが、このDCT起用の主旨はフォルクスワーゲンがほぼ全車にこのシステムを導入しているのと同じ理由だろう。1つ目はATよりもコストが安く済む事。2つ目はエンジンのレスポンスの悪さを、ATよりもギアの切り替えに要する時間が短くなる傾向のDCTでドライビングフィールの悪化を抑えようということだと思われる。

  もちろんDCTには欠点もある。フォルクスワーゲン車への一番の苦情はナビが外付けになることらしいが、次に多いのがこのDCTの加速時の不気味な挙動らしい。アメリカと並んでAT大国となっている日本では、MT運転経験がないドライバーも多くDCTのアクセルのタイミングが分からなくて苦労するようだ。仕組みとしてはMTと同じなので、ギアの切り替え時にアクセルオンのままではちょっと都合が悪くなるのは理解できるだろう。MT車でクラッチを踏みながらアクセルオンしてエンジンの回転だけがひたすら上がるような「おぞましい現象」などまったく想像せず、アクセルを踏みっぱなしにする人も多いらしい。これではDCTがすぐに壊れるのも無理はない。

  トヨタもレスポンスの悪いハイブリッドのために独自の電気式CVTを使っているが、果たしてDCT(ホンダの名称はi-DCD)が正解なのかトヨタ・スバル方式のCVTが正解なのかは興味深いところだ。結局アクアと新型フィットの勝負のポイントは、燃費ではなくてこのミッションの具合の良し悪しなのではないかと思う。

  ホンダはトヨタへの「報復」しか頭に無いようだが、現行フィットもアクアに劣らない大ヒット車だったわけで、トヨタ全店で売るアクアの販売網の強さを考えれば、その性能や消費者からの支持では決して負けているわけではない。むしろこの1年半ではアクアの乗り味がどうしても好きになれなくて、フィットを選ぶ人もかなり居ただろう。そう考えるとフィットの最大のライバルは、コンパクトカー随一の乗り味を争う日産のノートではないかという気がする。あまりアクアとの勝負にこだわり過ぎると、結果としてどんどんお客がノートへと流れて行くのではないかと心配してしまう。