トヨタ、日産、ホンダを見ていると、もはや会社が大き過ぎて気の利いたクルマが作れないのでは? そんな余計な心配をしてしまう。それほどに日本メーカーはまともに高級車が作れなく(作らなく)なった・・・。バブル期ならばジャガーやベントレーに伍するようなゴテゴテの素人にも解りやすい高級車をマツダや三菱でも作っていたくらいなのに。バブル以降は堂々とそういう仕事をやってのける人がもうほとんどいないのかもしれない。とくにトヨタ、日産、ホンダの安定した3社は、役員が失敗しそうなクルマは発売させないという弊害が常にあるらしい。社長が推進したGT-Rや86の例もあるにはあるが・・・。
おかげで日本の高級車市場には何とも言えない「ぬる〜い」空気が10年以上に渡って吹き溜まっている。新車で700万円くらいするのに、何も感動を呼ばない不思議なクルマがなぜかそこそこ売れる。案の定ネットでググればまともなサイトでもオーナー様やそれ以外の人々から批判の嵐。700万円で新車買ってここまでムカつく事ばかりだったら、そりゃクルマなんていらんってなるよね・・・。1900kgのクルマを直4にしたからって燃費なんてたいして良くなるはずないのに、完全にお客をダマした体のいいコストダウンに走っている。欧州の基準では直6はもう無理とか1年くらい前にBMW通で知られるジャーナリストが堂々と「間違ったこと」を書いていたが・・・、ジャーナリストもグルだ。そのくせ直4モデルを裏でメチャクチャバカにしているのが、最近の直6復活でバレバレになる・・・。
モラルもなにも無い欧州車に比べて、トヨタや日産は常に高級車の矜持を持っていた。おそらく開発を担当している人々も相当なプライドを持っているはず。日産のエンジニアは今もスカイラインとフーガの将来的な直4ターボ化に強く反対しているそうだが、おそらく根拠は「日産のプライド」だと思う。BMWやメルセデスの直4ターボを有り難がる日本人なんて日産の客ではない。本物が解る客だけ乗ってくれればそれでいいと思っている。高級セダンなら「ターボじゃなくてハイブリッド」これは世界中のメーカーですでに認識されていることだ。それでもクルマに無関心な日本人には見た目が同じならどうでもいいことかもしれない。
そんな皮肉な状況の中、ホンダは日本市場で静観の構えを見せてきた。レクサスに続いてアキュラを日本に導入する計画があったが、ハイブリッド化の遅れなど日本で売れる要素が見当たらないこともあり、リーマンショックを表向きの理由として撤回した。ホンダの大企業病が見えた瞬間だった。ホンダの決断はあまりに目先の利益に囚われていたように思う。レクサスは日本導入を積極的に行った結果、日本の使用環境をクリアしつつドイツ車と戦うことで、批判を浴びつつも着実な進化を遂げた。その戦果は確実に北米での商品力を押し上げ、先行するアキュラをいとも簡単に抜き去ることに成功した。
レクサスの北米での成功(2005年頃〜)と同期してアキュラと本体のホンダは利益こそは確保しつつも販売台数で伸び悩んだ。ホンダファンはヒュンダイによる過度のライセンス侵害(ホンディ!)を理由にしたがるが、この時期のホンダは決定的にアイディアが不足していたのは間違いない。ソニーが大不振に陥り、大卒文系の無能で世間知らずの経営陣が世界的な日本メーカーを内部から蝕んでいると批判されるようになった頃だが、ホンダもこの代表的な例に当てはまっていたようだ。ホンダに限らず、開発費が嵩む複雑なクルマの良し悪しなんてクルマ好きにしか解らないから売れない!頑張って作ったクルマほど大して売れない!がこの頃の自動車会社内部の合い言葉になっていたようだ。
ヒュンダイと比べてなにも変わらないクルマを大量に生産し、ヒュンダイと価格競争を繰り広げる。これは北米でのトヨタ・日産・ホンダの基本的な方針なのは間違いない。カンバン方式など効率化のノウハウで日本メーカーは優位に立っていたが、今じゃアメリカも韓国も日本メーカーをよく研究して同様の手法を使っている。鉄鋼メーカーとの強固なパートナーシップでいまもある程度は優位に立っているが、鉄鋼メーカー自体が中国や韓国に押されて、低質の鋼材価格では勝負できなくなってきている。
ゆえにトヨタはHVとFCVの開発に巨額の投資を行って、常に時代の先頭を行こうとしている。クルマファンの中にはトヨタはヤマハ任せで高性能ガソリンエンジンをまともに開発しようとしないと批判する人がいるが、背に腹は代えられないのが実情だ。HVのルマンならともかくF1参戦なんて現状のレギュレーションではトヨタにとってなんのメリットもない。
さてそんな日本メーカーを取り巻く現状で、ホンダのこれまで雌伏の時を過ごしてきたようだ。最近のホンダ車のメカニズムは明らかに他社とは一線を画す、誰の目にも高性能なものばかりだ。その次元があまりにも高過ぎて技術系雑誌でもそのポテンシャルの全容を安易に説明しようとはしない。今後ホンダは高級志向の市場(日本など)では3種類のHVをクルマの車格に合わせて展開し、新興国市場では3種類のVtecターボ(1L, 1.5L, 2L)をこれまたサイズに合わせて展開する方針だ。この6種類のパワーユニットが全てライバルから頭1つ以上抜けた存在の高効率性を持ち合わせている。やはりホンダは素晴らしい!
日本でも発売される予定の最上級のHVユニットを使った次期レジェンドが完成したようで、北米では試乗レビューが次々と出てきている。当初はNSXと同じユニットということで1000万円超という予想もあったが、システム馬力は377ps(NSXは500ps以上)なので、本体価格は700万円以下に抑えてくる公算が高い。ライバルのBMW5アクティブHV(900万)よりも「高出力」「低燃費」「AWDによる安定性」といかにもホンダらしいスペックを発揮しそうだ。やっとカーエンスーが全面的に支持できるクルマがホンダの日本市場ラインナップに帰ってくる。
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