2014年1月31日金曜日

レジェンド復活 北米でHVのプロト(日本発売モデル)登場

  トヨタ、日産、ホンダを見ていると、もはや会社が大き過ぎて気の利いたクルマが作れないのでは? そんな余計な心配をしてしまう。それほどに日本メーカーはまともに高級車が作れなく(作らなく)なった・・・。バブル期ならばジャガーやベントレーに伍するようなゴテゴテの素人にも解りやすい高級車をマツダや三菱でも作っていたくらいなのに。バブル以降は堂々とそういう仕事をやってのける人がもうほとんどいないのかもしれない。とくにトヨタ、日産、ホンダの安定した3社は、役員が失敗しそうなクルマは発売させないという弊害が常にあるらしい。社長が推進したGT-Rや86の例もあるにはあるが・・・。

  おかげで日本の高級車市場には何とも言えない「ぬる〜い」空気が10年以上に渡って吹き溜まっている。新車で700万円くらいするのに、何も感動を呼ばない不思議なクルマがなぜかそこそこ売れる。案の定ネットでググればまともなサイトでもオーナー様やそれ以外の人々から批判の嵐。700万円で新車買ってここまでムカつく事ばかりだったら、そりゃクルマなんていらんってなるよね・・・。1900kgのクルマを直4にしたからって燃費なんてたいして良くなるはずないのに、完全にお客をダマした体のいいコストダウンに走っている。欧州の基準では直6はもう無理とか1年くらい前にBMW通で知られるジャーナリストが堂々と「間違ったこと」を書いていたが・・・、ジャーナリストもグルだ。そのくせ直4モデルを裏でメチャクチャバカにしているのが、最近の直6復活でバレバレになる・・・。

  モラルもなにも無い欧州車に比べて、トヨタや日産は常に高級車の矜持を持っていた。おそらく開発を担当している人々も相当なプライドを持っているはず。日産のエンジニアは今もスカイラインとフーガの将来的な直4ターボ化に強く反対しているそうだが、おそらく根拠は「日産のプライド」だと思う。BMWやメルセデスの直4ターボを有り難がる日本人なんて日産の客ではない。本物が解る客だけ乗ってくれればそれでいいと思っている。高級セダンなら「ターボじゃなくてハイブリッド」これは世界中のメーカーですでに認識されていることだ。それでもクルマに無関心な日本人には見た目が同じならどうでもいいことかもしれない。

  そんな皮肉な状況の中、ホンダは日本市場で静観の構えを見せてきた。レクサスに続いてアキュラを日本に導入する計画があったが、ハイブリッド化の遅れなど日本で売れる要素が見当たらないこともあり、リーマンショックを表向きの理由として撤回した。ホンダの大企業病が見えた瞬間だった。ホンダの決断はあまりに目先の利益に囚われていたように思う。レクサスは日本導入を積極的に行った結果、日本の使用環境をクリアしつつドイツ車と戦うことで、批判を浴びつつも着実な進化を遂げた。その戦果は確実に北米での商品力を押し上げ、先行するアキュラをいとも簡単に抜き去ることに成功した。

  レクサスの北米での成功(2005年頃〜)と同期してアキュラと本体のホンダは利益こそは確保しつつも販売台数で伸び悩んだ。ホンダファンはヒュンダイによる過度のライセンス侵害(ホンディ!)を理由にしたがるが、この時期のホンダは決定的にアイディアが不足していたのは間違いない。ソニーが大不振に陥り、大卒文系の無能で世間知らずの経営陣が世界的な日本メーカーを内部から蝕んでいると批判されるようになった頃だが、ホンダもこの代表的な例に当てはまっていたようだ。ホンダに限らず、開発費が嵩む複雑なクルマの良し悪しなんてクルマ好きにしか解らないから売れない!頑張って作ったクルマほど大して売れない!がこの頃の自動車会社内部の合い言葉になっていたようだ。

  ヒュンダイと比べてなにも変わらないクルマを大量に生産し、ヒュンダイと価格競争を繰り広げる。これは北米でのトヨタ・日産・ホンダの基本的な方針なのは間違いない。カンバン方式など効率化のノウハウで日本メーカーは優位に立っていたが、今じゃアメリカも韓国も日本メーカーをよく研究して同様の手法を使っている。鉄鋼メーカーとの強固なパートナーシップでいまもある程度は優位に立っているが、鉄鋼メーカー自体が中国や韓国に押されて、低質の鋼材価格では勝負できなくなってきている。

  ゆえにトヨタはHVとFCVの開発に巨額の投資を行って、常に時代の先頭を行こうとしている。クルマファンの中にはトヨタはヤマハ任せで高性能ガソリンエンジンをまともに開発しようとしないと批判する人がいるが、背に腹は代えられないのが実情だ。HVのルマンならともかくF1参戦なんて現状のレギュレーションではトヨタにとってなんのメリットもない。

  さてそんな日本メーカーを取り巻く現状で、ホンダのこれまで雌伏の時を過ごしてきたようだ。最近のホンダ車のメカニズムは明らかに他社とは一線を画す、誰の目にも高性能なものばかりだ。その次元があまりにも高過ぎて技術系雑誌でもそのポテンシャルの全容を安易に説明しようとはしない。今後ホンダは高級志向の市場(日本など)では3種類のHVをクルマの車格に合わせて展開し、新興国市場では3種類のVtecターボ(1L, 1.5L, 2L)をこれまたサイズに合わせて展開する方針だ。この6種類のパワーユニットが全てライバルから頭1つ以上抜けた存在の高効率性を持ち合わせている。やはりホンダは素晴らしい!

  日本でも発売される予定の最上級のHVユニットを使った次期レジェンドが完成したようで、北米では試乗レビューが次々と出てきている。当初はNSXと同じユニットということで1000万円超という予想もあったが、システム馬力は377ps(NSXは500ps以上)なので、本体価格は700万円以下に抑えてくる公算が高い。ライバルのBMW5アクティブHV(900万)よりも「高出力」「低燃費」「AWDによる安定性」といかにもホンダらしいスペックを発揮しそうだ。やっとカーエンスーが全面的に支持できるクルマがホンダの日本市場ラインナップに帰ってくる。


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2014年1月16日木曜日

ホンダ・ヴェゼルの初動が驚愕の数字・・・

  ジュークがこね、XVがつきし天下餅、座りしままに喰うはヴェゼル・・・。あれCX-5は?・・・。ハイアーもエクストレイルも予想以上に順調だそうですが、こちらはモデルチェンジ組で前モデルもかなり好評で乗り換え顧客を十分に囲い込める恵まれた環境ではありますね・・・。一方でジューク、CX-5、ヴェゼルといった新規車種が次々とヒットをとばす「都市型SUV」というジャンルは、日本メーカーにとって思いもよらない金鉱脈だったようです。

  機能性を高めて年々シェアが上がっている軽自動車の人気の裏で、日本人の中流意識が邪魔して軽自動車へと安易に流れられない層を上手く取込む普通車のジャンルがこれまで未発達だったように感じます。実際にファミリーユースになるとハッチバックもセダンも2人乗りのスポーツカーと大して変わらないユーティリティしか発揮できません。実際にクラウンの後部座席よりもヴェゼルの後部座席の方が圧迫感が少ないと感じるほどです。

  なぜ400万円程度もするクラウンを買って窮屈な思いをしなければいけないのか?しかも最近のセダンはデザイン優先で全高をさらに低く抑える傾向にあります。常に3人以上の乗車をするユーザーにとってはセダンはますます選択しにくくなっていて、ワゴンに関しても同様に苦戦が続いています。

  ワゴンRとムーブに代表されるハイトな軽自動車が爆発的にヒットして以降、普通車にユーザーが求めるものもかなり変わってきたようです。機能性を高めた軽自動車によって、結果的に普通車の淘汰は進んでいるようで、付加価値の感じにくい現行カローラやオーリスがトヨタの販売網を使っても惨敗しています。もちろん軽自動車を最初から検討しない層もいますが、ワゴンRと比較したときに明らかに居住性が劣ると思われる普通車などはたくさんありますし、普通車へ向けられるハードルを結果的に押し上げています。

  カローラの惨敗を受けて、普通車はハイブリッドじゃなければ売れないという声もありますが、マツダアクセラのように予想以上にHVが不人気になっているケースもあり、単純に付加価値=HVというわけでもないようです。ヴェゼルも必ずしもHVゆえの初動受注2万4千台というわけではなく、ホンダが全精力を傾けてユーザーの嗜好を徹底調査したデータに基づいて、「欲しい」と思わせるクルマを見事に作りあげた成果だと思います。

  軽自動車より使えない普通車なんて論外だし、価格面で納得できる範囲(安過ぎず高過ぎず)に落とし込んでいて、ムダな大排気量でのランニングコストの高騰を抑えて・・・といったユーザーの切実な想いを総合するとホンダの設定は実に見事だなと感心します。もしかしたらハリアーの2万台を相当意識したステマなのかもしれませんが・・・。

 

2014年1月7日火曜日

ヴェゼルで日本100万台を目指せ

  絶対に失敗は許されないフィットや、ブランドイメージを背負ってコンサバにならざるを得ないアコードの新型が2013年に相次いで発売されたが、そこには人々がホンダに期待するものは多くは見られませんでした。その一方で東京MSで大盛況だったS660は最高にとんがったクルマなのに程よく力が抜けた絶妙なバランス感が印象的でした。おそらく市販モデルも十分に期待できるでしょう。

  かつては5ナンバー時代のアコードを始め、最終型のレジェンドやインスパイアも一見地味な存在ながらもよく見れば素晴らしい造形に包まれた抜群のデザインをしています。発売から10年経過してもまったく魅力が薄れない名車と言っていいと思います。いずれも力が抜けて遊び心が良い方向へ転がっています。一方で先代と先々代のアコードは、明らかに力み過ぎで余裕の無いデザインが酷いですが・・・。

  待っていればホンダがまた気の利いたデザインのクルマを作ってくれるでしょうが、Noneのような軽ならまだしも、ここ近作の普通車はどうもカチカチでなかなか期待できる気配がありませんでした。そんな折に出て来たのがホンダ・ヴェゼルで、ホンダ唯一のSUVであるCR-Vからは想像が出来ないほどにポップに仕上がっていて、いよいよホンダらしい「力のぬけた」良いデザインが登場してきました。

  簡単にいうと、スバルの好調なXVのコンセプトをそのまま踏襲したようなクルマです。ホンダにしては恐ろしく素早いタイミングで繰り出してきたコピーモデルという形になっています。スバルXVはもはやSUV(フォレスターの仲間)と呼ぶには違和感があるほど、独自の世界観を築きつつあるクルマで、「XV-スタイル」という新しいジャンルを切り開きつつあります。XV以前にもVWクロスポロやBMW X1といった先駆的モデルはあったのですが、「なんちゃってSUV」という入門モデルと見做されている雰囲気が確実にありました。イタリア車としてフィアットからも発売されているスズキSX4も、かなり早い段階で登場しましたが、日本では地味な存在に留まっています。このクルマのデザインはジウジアーロ率いるイタルデザインが取り組んだものです。

  しかしスバルXVは、それら廉価版モデルと見做されてしまう情けないクルマ達とは一線を画した洗練されたクルマとして登場し、このクラスのテーマカラーである「オレンジ」を流行色へと変えていきました。XVが素晴らしいのはデザインやカラーリングだけでなく、衝突安全性の面でも強敵のVWゴルフを超える脅威の数値を叩きだし、ユーロNCAPの単純なスコアだけなら、世界の頂点に立った受動安全性を誇っています。

  ホンダもこのスバルの謙虚な姿勢には敬服しているようで、HVのアーバンSUVコンセプトから市販モデルに落とし込んで、ヴィゼルとして市場に投入するに当たり、このクルマへのユーザーの期待に最大限に応えるための努力の痕が内外装の意匠に強く見られます。XVは今や本家のインプレッサのイメージを完全にジャックしていて、G4やスポーツHBの古くさいイメージは次のモデルでは淘汰されているかもしれません。

  輸入車のスポーツHBが話題の2013年でしたが、その裏で日本車のトレンドは着実に変化しています。もはやスポーツHBは古くさいスタイルで、これからは「XV-スタイル」なんだという勢いを感じます。アクセラを先代と同じラインナップで自信満々に出したマツダとシビックを復活させずにヴェゼルを作ってきたホンダはどちらが戦略的に正しかったのか? 2014年が終わる頃にはまた違う結論が出ているのではないかという気がします。